佐倉市(千葉県) 武家屋敷とサムライの小径

武家屋敷通り

自宅から印旛沼まで、片道約30Kmの適度な距離のサイクリングを楽しむことが多い。 いつもは印旛沼で折り返すが、少し足を伸ばして佐倉市内を回ってみた。

佐倉市は11万石の佐倉藩として栄えた城下町である。 江戸時代には三重櫓を持つ佐倉城があったが、明治時代に取り壊され,、陸軍佐倉連隊の駐屯地となった。 現在は城址公園として整備され、土塁や空濠などを見ることができる。 また公園の中心部には国立歴史民俗博物館(通称「歴博」)がある。

幕末の藩主は幕府の老中を務めた堀田正睦(まさよし)で、黒船来航から始まった幕末の動乱の中で、開国路線を推し進めた人物である。 しかし朝廷からの勅許獲得失敗や、南紀派と一橋派に別れた将軍後継ぎ争いの中で失脚した。 また堀田正睦は蘭学を奨励してオランダ医学の導入や、医療教育を行う佐倉順天堂を開設させるなど、進取の気風を持った藩主であったことが伺える。

訪問日:2013年1月13日

目次

蘭学通り沿いの建物

佐倉市内を東西に走る蘭学通りには、蔵造りの店や昭和の香りを残す建物が点在する。

佐倉市立美術館

大正7年築の旧川崎銀行の佐倉支店で、現在は市立美術館のエントランスホールとして活躍している

佐倉市立美術館

佐倉町並み情報館 「一里塚」

NPO法人が運営している観光ガイド館。 幕末に桂小五郎(木戸孝允)が宿泊した、”油屋”という宿の跡地だそうである。

佐倉街並み情報館

旧平井家住宅

明治期に建てられ、酒屋を営んでいたた平井家住宅。 袖蔵も建つが、この袖蔵は母屋の防火壁の役割を持っていたそうである。

旧平井家住宅

最後の佐倉藩主邸

市内には佐倉藩の第6代で最後の藩主となった、堀田正倫の邸宅や庭園が残る。 明治23年(1890)に建てられ、現在は国指定重要文化財である。

旧堀田家住宅
旧堀田家住宅

身分の違いが判る武家屋敷

鏑木小路とも呼ばれる通りに5棟の武家屋敷が集まり、その中の3棟が公開されている。 通りの両側には土塁や生け垣が築かれ、往時を忍ばせる雰囲気を持っている。

武家屋敷通り

佐倉藩では、天保4年(1833年)に「天保の御制」なる定めを作り、武士の禄高により住宅基準を設けたようである。 武家屋敷通りで公開されている3棟の屋敷は、この住宅基準に沿って建てられ、旧河原家住宅が大屋敷、旧但馬家住宅が中屋敷、そして旧武居家住宅が小屋敷に相当するそうである。

旧河原家住宅

移築復元された住宅だが、1845年に書かれた古文書に存在が記されているそうである。 300石以上の禄高をもつ武士が住む、大屋敷に相当しているそうである。

旧河原家住宅

武士の品格が伝わってくるような、立派な手水鉢である。

旧河原家住宅

かなり長い縁側である。 現代の家と異なり、夏涼しく、冬は隙間風入りまくりの寒い家だったのであろう。

旧河原家住宅

旧河原家住宅納戸 納戸と言っても8畳ほどの広さである。 家具や生活用品が置かれ、当時の生活に思いを馳せることができる。

旧河原家住宅

旧但馬家住宅

旧但馬家住宅

禄高100石以上の中屋敷である。 この旧但馬家住宅は室内に上がることが出来る。 写真ではこじんまりした家に見えるが、中に入ると結構広い家である。

旧但馬家住宅

旧但馬家住宅は旧所在地に復元整備されたそうだ。 このつるべ井戸も昔からここにあったのだろう。

旧但馬家住宅

玄関の上り框に続く、玄関座敷とでも言うのであろうか? 登城する武士と、三つ指ついてそれを見送る妻の姿が目に浮かぶ。

しかし、このような玄関はもっと偉い武士などの客を迎える時に使用し、家族などは別の通用口のような所を出入りしていたと思われる。

旧但馬家住宅

旧武居家住宅

百石未満の武士が住む小屋敷である。 他の2軒と同じように、昔は茅葺の屋根だったのだろうが、現在はトタンで覆われてしまっている。

旧武居家住宅

玄関から奥の座敷を望む。 床の間には、凛とした武士の写真が飾られていた。

旧武居家住宅

禄高100石といっても、現在の年収では1000万ほどのようである。 しかし税金などを引かれ、手取り年収は500万といわれている。

サムライの小径

武家屋敷の周りには、「くらやみ坂」と「ひよどり坂」と呼ばれる坂がある。 どちらも江戸時代の風情を残したような、情緒あふれる坂道である。

くらやみ坂

武家屋敷通りに並ぶ旧河原家と旧但馬家住宅の間に、細い坂道が下っている。 鬱蒼と茂る木々で覆われ、街灯の無い昔は本当に真っ暗闇で、武士が闇討ちするには最適な場所である。

くらやみ坂

サムライの小径 ひよどり坂

武家屋敷通り西側の奥まった所に「ひよどり坂」がある。 武家屋敷の武士達が佐倉城へ登城する、今風に言えば通勤路だったようだ。

ひよどり坂

竹林といえば京都や鎌倉を思い起こすが、佐倉にもインスタ向きの竹林がある。

ひよどり坂

このひよどり坂やくらやみ坂は、夜には辻斬りでも出てきそうな場所である。 現代でも、夜に一人歩きするには相当な勇気が必要であろう。

ひよどり坂

江戸時代の武家屋敷や、武士が登城時に通ったと思われる小路などが残り、当時の武士の暮らしを垣間見ることができる佐倉市。 まだまだ探ればいろいろとありそうである。 再訪しよう・・・

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