小石川植物園を始めて訪れたのは、まだ幼かった小学校の遠足であった。その後何度か訪れているが、秋の気配に誘われて久しぶりに訪れた。
都心の木々が色づくにはまだ少し早い秋の日。しかし 園内へ足を一歩踏み入れると、そこには都心の喧騒とは無縁の豊かな森が広がっていた。
立ち並ぶ大木の合間からは周囲の建物すら見えず、ここが東京であることを忘れるほどの豊かな緑。まるでどこか自然の中に身を置いているかのような感覚に囚われる。
都心の喧騒を離れ、植物園の木々に包まれて歩いた秋の休日散歩である。
訪問日:2026年10月31日(土)

小石川植物園へ
都営地下鉄三田線の白山駅から歩いて植物園に向かう。
途中「蓮華寺坂」「御殿坂」と上り下りするが、この付近は本郷台地の縁(へり)にあたるようで、坂が多い複雑な地形をしている。
御殿坂を下ると小石川植物園の入口。 正式名称は「東京大学大学院理学系研究科附属植物園」と、ずいぶん長い名称である。
入園料は¥500。 残念ながらシニア割引などはない。

オオモクゲンジの木
門を入りすぐ右手に、枝の先の葉が枯れたのか花なのか判らないような大きな木があった。
名札を見ると「オオモクゲンジ」とあり、黄色の花を咲かせた後に、ピンクの袋状になって実をつけるとのこと。 これはその実となった様子である。

下に落ちていた袋状の実を拾い、中を開けると黒くて固い実が数個入っていた。

小石川植物園本館
入口から本館に向かう広い道。 天気も良いせいか、予想以上に訪れる人は多かったが、混雑という感じは全くない。

1939年に建てられた本館。 多くの標本や植物学図書が収蔵され、現在は非公開だが研究に活用されているそうだ。

「ニュートンのリンゴ」の木
温室に向かって歩くと、途中に「メンデルのブドウ」とか「ニュートンのリンゴ」と説明された木がある。 昔学校で習った名前であるが、接木や分株で残された木だそうだ。
スギというと、スクッとまっすぐに伸びたイメージがある。 しかしこの写真は大きく枝分かれしたヒマラヤスギ。
スギは手入れしないと、このように好き放題・自由奔放に枝分かれするのだろうか?

「ニュートンのリンゴの木」というものがあった。 説明版によると、ニュートンはリンゴの木から実が落ちるのを見て「万有引力の法則」を発見したが、その木から接木されたという、由緒正しきリンゴの木だそうだ。 リンゴができたら食べてみたい・・・

隣には「メンデルのブドウの木」が植わっていた。 メンデルといえば、エンドウ豆だと習ったのだが・・・
温室と冷温室
熱帯や亜熱帯植物を育てる温室だけでなく、高山植物などのために冷温室もある。 この冷温室にはコマクサなども植わっていたが、残念ながらこの季節なので何も咲いていなかった。
温室に咲いていたカラフルな花。 蕾と花と実が同時に付いているのか? 名札には「インドジャボク」とあったが、どうも薬草らしい。

紫の綺麗な花が咲いている。 名札にはヒガンバナ科の「Griffinia hyacinthina」とあった。 「グリフィニア・ヒアシンティナ」と読むそうだが、あの赤いヒガンバナ(曼殊沙華)とは随分違っている。

園内散策
温室を出て植物園の奥に向かって散策する。
イロハモミジの並木だが、まったく紅葉していない。 紅葉時期は見事だろう。

右の大きな木はイチョウの木。 イチョウには雌雄あることは知っていたが、この木からイチョウの精子を発見したそうだ。 銀杏ができるのは花粉ではなく、精子なのか ??
この銀杏は酒のつまみなどに美味しいが、食べ過ぎると中毒することで知られている。 気をつけよう・・・

上高地の小梨平とか徳沢園のような雰囲気。

針葉樹林とあったので、カラマツでもあるのかと行ってみたら、杉とかヒノキだった。

植物園の園内からは、あまり周囲の建物は見えない。 しかし日本庭園に向けて石段を下る途中、木立の間から文京シビックセンターが見えた。

植物園の高台から低地に下りると日本庭園の池が広がる。 小石川植物園も本郷台地の縁の斜面に位置するので、湧水があるのだろう。
この池の傍のベンチに座り、ボケっとひと時を過ごす。 心の洗濯のような時間であったが、果たして心は綺麗になったのだろうか?

東京大学の前身となる旧東京医学校本館が残る。 重要文化財だそうだ。

正門入口近くに戻ると、メタセコイアの林がある。 この写真だけ見ても、都心にいるとは思えない。

帰りは茗荷谷へ
小石川植物園を出て、帰りは丸ノ内線の茗荷谷駅に向かう。
千川通りから播磨坂を上る。 桜の季節には、この播磨坂で桜まつりが開かれるという。

文京区といえば小石川後楽園や六義園といった端正な大名庭園が有名だが、この小石川植物園はもう少し自然の素顔に近い。
都心であることを忘れるほどの空間には、散策路だけでなく、まるでハイキングコースのような草木深き道も広がっている。
立ち入り禁止の区域を除けば、大木の幹や葉に直接触れて観察できるのも大きな魅力だ。また 説明版をじっくり読んで「へえ」と感心して新たな知識というか雑学を得るのも楽しい。(もっとも すぐに頭から消え去ってしまうが・・・)
都心にいながら喧騒を忘れ、のんびりと自然と触れ合う。思った以上に楽しく満ち足りた一日となり、入園料以上の価値を実感した散歩となった。

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